拉致問題~あれから14年
「原元美紀の女子アナワークショップ」、10月のテーマは、「拉致問題」でした。
講師にはリポーター歴約30年の所太郎氏をお招きしました。
所さんは、オウム真理教の一連の事件、和歌山毒カレー事件、神戸連続児童殺傷事件、阪神淡路大震災、…など、日本を揺るがす重大な事件事故災害現場に必ず姿を現すと言われるリポ-ターです。
これまで5,000件もの現場を踏んできた豊富な取材経験の中から選んでいただいたテーマが「拉致問題」だったのです。
2002年9月17日、当時の小泉純一郎総理大臣の北朝鮮電撃訪問。そして、10月15日の拉致被害者5人の帰国。
しかし、そこから実に14年もの月日が経ちました。
北朝鮮に翻弄され続け、一向に進展しない「拉致問題」について、若い世代にぜひ伝えたい、知ってもらいたいと語ってくださいました。
今回参加してくれた若手の女子アナの皆さんは20代~30代前半なので、子供の頃にニュースで見たことがあるというくらいの世代です。
まず、日本政府が制作した拉致問題啓蒙ビデオ「めぐみ」を視聴しました。これはアニメ仕立てになっており、めぐみさんの失踪、家族の苦悩など拉致問題についてよく分かる動画です。フリーソフトで誰でも視聴できます。ぜひたくさんの方に見てほしいと思います。
<日本政府が作成した啓蒙ビデオ「めぐみ」>
13歳で拉致されためぐみさんが、どれだけ愛情を持って育てられていたか、突然闇に突き落とされた家族の苦しみと悲しみが胸に迫ってきます。
そして、所さんが取材で感じた横田さんご夫妻のお人柄や報道されていない知られざる場面など、貴重なお話を聞かせてくださいました。
中でも印象的だったのは、被害者5人が日本に帰国し、飛行機のタラップから降りてくる場面の話です。
5人が20年ぶり以上に日本の地を踏み、家族と抱き合い再会を喜ぶ姿を、少し離れてカメラで撮影する一人の男性がいたそうです。
それは横田滋さんでした。
所さんが滋さんに理由を尋ねると、「記念すべき瞬間なので写真を撮ったら良いだろうけれど、皆さんそれどころではないでしょうから・・・」。
所さんは滋さんの心中を思って「それどころではないのはあなたの方なのに!」と衝撃を受けたそうです。
横田さん夫妻は愛娘の失踪が北朝鮮の拉致と判明してから、国民や政府に救出を訴えてこられました。思うような反応が返ってこず、幾度となく絶望し、また立ち上がってこられたのでしょうか。
横田早紀江さんが2002年9月17日に、北朝鮮から「めぐみさん死亡」と通告を受けたとき、記者会見で語った言葉が胸に刺さります。
「めぐみのことを愛してくださっていつもいつも取材してくださった皆さまに、また祈ってくださった皆さまに心から感謝いたします。まだ生きていることを信じ続けて闘ってまいります」
参加した女子アナの皆さんからは、こんな感想をもらいました。
「拉致問題に自分がアナウンサーとして何が出来るのかと迷走していましたが、横田さんのお母様のマスコミに対しての言葉は、アナウンサーとしてテレビに関わって力になれることがあるのだと改めて思わせてくれました」
「横田さんが発した取材側への感謝の言葉から、改めてメディアが大きな力になれるという事を感じました。」
「ニュースでは知っていても、当事者の方の人柄に触れることはなかなか出来ないので、今回惜しげも無く話して下さった所さんに感謝したいです。」
「『リポーターは皆様の願いを受け止めて取材し、伝えなければならない』『気持ちを感じ、現場から語られる声を届ける』という所に特に共感致しました。」
惜しみなく貴重なお話や資料を披露してくださった先達にみな感銘を受けていました。
このバトンを受け継ぐのは若い皆さんです。頑張って欲しいと思います。